枚岡神社は、生駒山地の西麓、暗峠越奈良街道の通る交通の要衝、大阪府東大阪市出雲井町に鎮座し、『延喜式』神名帳では河内国河内郡の名神大社となっています。
祭神は、天児屋根命・比売命・経津主命・武甕槌命の4神で、『延喜式』「春日祭祝詞」の春日神4神に「枚岡坐天之子八根命」がみえます。
神官家の平岡連は、『姓氏録』河内国神別に「津速魂命14世孫鯛身臣の後」とあり、津速魂命は、『姓氏録』左京神別上の藤原朝臣条などに「津速魂命3世孫天児屋根命」とみえ、平岡連は、中臣氏と近い氏族であることがわかります。
いっぽう、神社の所在地は、『和名抄』の河内国河内郡豊浦郷に属し、北は額田郷に接し、「豊浦」「額田」は、天津彦根と関係をもつ地名です。(→ 長門の住吉坐御荒魂神社)
河内国河内郡の筆頭勢力である河内国造(凡河内直)も、天津彦根後裔氏族です。
枚岡神社の鎮座地の小字「出雲井」は、「天押雲根」を祭る境内摂社の若宮社の傍らの井戸に因むものですが、「天押雲根」は、出雲の八岐大蛇の尾から出現した「天叢雲剣」と似ることが注目されます。(→ 天村雲とホアカリ・角凝)
「出雲」の要素は、『記』ウケヒ神話の系譜において、天津彦根が出雲臣の弟とされることに符合します。
枚岡神社は、その属性において、中臣氏の祖神と天津彦根の重複が認められます。