壱伎直・壱伎県主・壱岐島造

壱伎直は、壱岐島を本拠地とし、亀卜を職掌とする氏族であり、『姓氏録』右京神別上に「天児屋根命の九世孫、雷大臣の後なり」と記されます。

『新撰亀相記』の撰上者として知られる、壱岐直氏成は、『松尾社家系図』に「月読宮長官」とあり、氏成の子としてみえる、伊吉是雄は、『三代実録』貞観14年4月24日癸亥条にみえる卒伝に、「壱伎嶋人也。本姓卜部。改為伊伎。始祖忍見足尼命」とあります。

「始祖忍見足尼命」は、『紀』顕宗紀に月神祭祀者としてみえる壱伎県主先祖押見宿禰を示し、月神の祭祀地である山背国葛野郡の「歌荒樔田」は、松尾大社の摂社で松尾月読神社とよばれる、葛野坐月読神社を指すので、壱伎直と壱伎県主は、同一勢力と推測されます。(→ 『紀』顕宗紀の月神・日神祭祀

また、「国造本紀」に、伊吉嶋造がみえ、「磐余玉穂朝 伐石井従者新羅海辺人天津水凝後上毛布直造」と記されます。

「天津水凝」後裔の「上毛布直造」とありますが、『類聚国史』巻19に「天長5年正月丁丑、従五位下壱岐直才麻呂任壱岐嶋造」と記され、壱伎直と同一勢力と思われます。(→ 「国造本紀」の伊吉嶋造

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